九九の覚え方は丸暗記だけではない!ご家庭で支える小学2年生の練習の進め方

「ににんが4、にさんが6」。リズムにのせて唱える九九は、小学2年生の算数の大きな山場です。順番には言えるのに、ふと「7×6は?」と聞くと答えが出てこない。そんな様子を見ると、「うちの子は覚えが悪いのかも」と不安になる保護者の方も少なくありません。
結論からお伝えすると、九九がなかなか身につかないのは、お子さんの覚えが悪いからでも、保護者の方の教え方が悪いからでもありません。九九が身につくまでには段階があり、そのどこかで足踏みしている可能性があります。その段階とは、「かけ算の意味が分かる」「順番に唱えられる」「ランダムで答えられ、場面を式にできる」の3つです。
止まっている段階が分かれば、練習の選び方は変わります。意味の確認が必要な子にカードを繰り返しても、唱える練習が足りない子に文章題を出しても、かみ合いません。
「うちの子は今どの段階にいるのか」。まずここを見分けられれば、今日からの練習はぐっと選びやすくなります。
九九が「覚えられない」とき、まず見分けたい3つの段階
九九は、一度に全部できるようになるものではありません。おおよそ次の3つの段階をたどりながら身についていきます。
段階1 かけ算の意味が分かる(「3が2つ分で6」と説明できる)
段階1は、「3×2」なら「3が2つ分で6」と、かけ算の意味を説明できる状態です。かけ算が「1つ分の数×いくつ分」のまとまりを表すこと、「3+3」と同じ答えになることを確かめられていれば、土台はできています。
ここがあやしいまま唱え方だけを覚えようとすると、単なる言葉の暗記になります。忘れたときに思い出す手がかりを失いやすいのが難点です。
段階2 順番に唱えられる(のぼり・くだりで言える)
段階2は、「さんいちが3、さんに6」とのぼり(小さい数から順に)で唱えられる状態です。慣れてくると、くだり(逆順)でも言えるようになります。
ただし、すらすら言えていても「順番の記憶」に頼っている場合があります。ここで止まっていると、ランダムに聞かれたときに答えを出せません。
段階3 ランダムで答えられ、場面を式にできる
段階3は、順番を問わず「6×7は?」と聞かれて答えられる状態です。あわせて、「1箱に6個入りのプリンが4箱」と聞いて「6×4」と式を立てられることも含みます。
学校のテストや文章題で求められるのは、主にこの段階の力です。
お子さんの様子から見分ける原因別チェック
「覚えられない」には、いくつかのパターンがあります。たとえば、3の段は通しで言えるのに、バラバラに聞くと「3・6・9」あたりで止まり、頭の中でこっそり3ずつ足し直している子は、段階2から段階3への橋渡しの途中です。よくある状態で、能力不足ではありません。
ご家庭での見え方:
夕食後の10分、「7の段、言える?」と順に唱えてもらうとすらすら言える。ところが「じゃあ7×4は?」と聞くと黙り込み、「7、14、21……」と頭の中で数え始める。こんな場面なら、順に唱える段階は通過していて、次の一歩はランダムで取り出す練習です。
ご家庭で見えやすい6つのサインについて、「最初に確認すること」と「最初の対応」を整理しました。
| 家庭で見えるサイン | 最初に確認すること | 最初の対応 |
|---|---|---|
| 「3×2は何を数えるの?」と式の意味をたずねてくる | 教科書の「いくつ分とかけ算」の学習が済んでいるか(目次とノートの日付で確かめる) | おはじきを「3が2つ分」に並べ、式と結びつける |
| のぼりは言えるが、くだりや途中からだと止まる | 教科書の式を指でなぞりながら、声に出して読めるか | 今日習った段の式を音読し、リズムにのせて唱える |
| 順には唱えられるが、ランダムで聞くと頭の中で数え直す | どの段までなら順に唱えられるか、カードにするとどこで止まるか | その段の九九カードを抜き出し、出し合いっこをする |
| 式は言えるのに、文章題で式を立てられない | 問題文の「1つ分の数」と「いくつ分」を指差して言えるか | 食卓や買い物で「何のいくつ分?」を探し、式にする |
| 6・7・8の段など、決まった段で毎回止まる | 「前の答えにその段の数を足す」考え方を知っているか | つまずいた式の前後3つをセットで唱える |
| 一度言えた段を、数日後に忘れている | 最後にその段を練習したのはいつか(ノートやメモを見返す) | 責めずに、短い唱え直しから再開する |
表の1・2行目は段階1から2、3行目は段階2から3への橋渡し、4行目は段階3に対応し、5・6行目はどの段階の途中でも起こるサインです。どの段階にいても、心配しすぎる必要はありません。大切なのは、今いる段階に合った練習を選ぶことです。
学校で習う順序と、教科書・ノートの見直し方
ご家庭での練習は、学校の授業の進み方に沿って進めるのが基本です。先回りして一度に全部やろうとすると、お子さんが混乱したり、授業とのずれが生じたりすることがあります。
かけ算が「意味→九九の学習→九九の表」の順に進む例
一例として、啓林館「わくわく算数2」の年間指導計画案では、「いくつ分とかけ算」「何ばいとかけ算」などのあとに九九の学習が位置づけられています。
この計画案では、九九を一通り学んだあとに、九九の表や、かける数が1つ増えたときの答えの増え方を確かめます。かける数とかけられる数を入れかえても答えが同じになること(交換法則)も、このあとで学ぶ構成です。
単元の並びは教科書によって異なります。お子さんの教科書の目次で、かけ算の単元がどの順に並んでいるかを確かめましょう。
段の順番は学校と教科書を優先(5・2・3・4の段から進む例)
段を学ぶ順番は、1の段から順番に進むとは限りません。たとえば啓林館の年間指導計画案では、5・2・3・4の段を先に学び、続いて6・7・8・9・1の段に進む構成になっています。
ただし、これは一つの教科書会社による計画案の例で、全学校共通の固定された順序ではありません。子どもが使っている教科書と授業の順番を優先してください。
教科書の例題とノートで「今日どこまでやったか」をたどる
練習をどこから始めるか決めるには、まず授業の進度を確かめます。つまずいた場所を探すときも、同じ手順でたどれます。「教科書の目次→授業で使ったノート→例題→練習問題」の順に見ていきましょう。
- 教科書の目次を開き、「いくつ分とかけ算」「かけ算の九九」といったかけ算の単元の並びと、いま学んでいる単元の位置を確認する
- 授業で使ったノートのいちばん新しいページを見て、日付と板書から、いま学んでいる段を確認する
- 教科書でその段のページを開き、例題への書き込み・線・印の有無から、授業でどこまで扱ったかを確かめる
- 練習問題に答えや丸がついているかを見て、解き終わっているか、どこで止まっているかを確かめる
持ち帰ったプリントや宿題があれば、どの段の練習が出ているかも参考になります。
つまずいている場所が分かったら、戻るのは「1つ手前」までで十分です。ランダムで止まるなら順に唱える練習へ、順に唱えられないなら例題での意味の確認へ戻ります。戻ることはやり直しではなく、次に進むための土台づくりです。
「今日習った段を、その日のうちに声に出してみる」形なら、学校での学びにも自然につながります。千葉県教育委員会の「家庭学習の習慣化を図ろう」でも、学校の手引きや授業で扱った学習内容の確認が勧められています。
段階別・ご家庭でできる練習の進め方
段階ごとに、使うもの・手順・声かけ例・その日のやめどきをセットで紹介します。いずれも短い時間で区切れる内容なので、「今日のどの時間にやるか」も決めやすいはずです。
意味があやしいとき:おはじきやお菓子で「1つ分×いくつ分」を確かめる
使うもの:
おはじき、またはおやつのお菓子など、同じものを15〜20個程度。
手順:
「4を3つ分」と言いながら、4個ずつのかたまりを3組並べます。全部でいくつになるかを数え、「4×3=12」の式と結びつけます。
声かけ例:
「4のかたまりが3つあるね。式にするとどうなる?」
その日のやめどき:
2〜3問確かめて、「1つ分×いくつ分」の言葉と並べ方が結びついたら終わりにします。
順に唱えたいとき:教科書の式を音読し、リズムにのせる
使うもの:
教科書の九九のページ。
手順:
並んだ式を指でたどりながら、「にいちが2、ににんが4」と声に出して読みます。慣れてきたら教科書を閉じて唱えてみます。
声かけ例:
「まず教科書の通りに読んでみよう。最後まで言えたら、今度は閉じてみようか。」
その日のやめどき:
今日習った段1つを、通して2〜3回唱えられたら切り上げます。
ランダムで答えたいとき:九九カードで出し合いっこ
使うもの:
算数セットの九九カード。
手順:
練習する段のカードを抜き出してよく混ぜ、1枚ずつ出します。答えられたら表、迷ったら裏に分け、裏に残ったカードだけでもう一度挑戦します。出す役と答える役を交代すると、遊び感覚で続けられます。
声かけ例:
「分からないのがあっても大丈夫。言えそうなところから答えてみて。」
その日のやめどき:
5〜10分、またはカード1周で終わりにします。「全部正解するまでやる」と長引きやすいので、時間か回数を先に決めておきます。
場面を式にしたいとき:食卓や買い物で「何のいくつ分?」を探す
使うもの:
食卓のお箸、卵のパック、買い物の商品など、暮らしの中にある「同じ数のまとまり」。
手順:
「お箸が4人分あるね。2本ずつだから2×4で8本。」と、身の回りのまとまりを式にしてみます。お子さんにも「何か見つけられる?」と聞いてみます。
声かけ例:
「この卵パック、1列6個で2列あるね。式にすると何になるかな。」
その日のやめどき:
1日1つ見つけられたら十分です。毎日の食事や買い物のついでにできるので、欲張らないのが続けるコツです。
小2の1日にどう組み込む?帰宅後と夕食後の流れの例
練習は「いつやるか」が決まっていると始めやすくなります。小2のお子さんを想定した流れを2つ紹介します。時刻や分数はあくまで例であり、一律の基準ではありません。
帰宅後に短く済ませる場合(例)
- 帰宅したら、手洗い・おやつでひと息つく
- 宿題を済ませる(算数の宿題があれば、今日の段の復習を兼ねる)
- 宿題のあと、教科書で今日習った段を2〜3分音読する
- 九九カードを1周(5分程度)したら終わり。あとは自由時間
夕食後にまとめてやる場合(例)
- 夕食と片付けが終わったら、10分と時間を区切る
- 最初の3分:今日習った段の式を教科書で音読する
- 次の5分:九九カードかアプリでランダムに答える
- 最後の2分:「今日どこまで言えたか」をメモして終わりにする
- お風呂場に九九表が貼ってあれば、入浴中に目に留まる程度でよい
北海道教育委員会の資料でも、家庭学習の時間は一律に決めるのではなく、各ご家庭・地域・子どもの実態に応じて設定し、進級時などに見直す際の参考資料とされています。短くてもよいので、お子さんが毎日無理なく触れられる時間帯を、ご家庭の生活リズムに合わせて選んでください。
6・7・8の段など、時間がかかる段との付き合い方
6の段以降は答えの数が大きくなり、読み方も複雑になるため、5の段までより時間がかかるのが自然です。「うちの子だけ遅いのでは」と焦る必要はありません。ここから紹介する3つの工夫は、つまずきやすい段に取り組む際の一例です。効果を保証するものではないため、お子さんに合いそうなものから試してみてください。
忘れたら「前の答えに足す」考え方を伝える
たとえば「7×6」が出てこないとき、「7×5=35」に7を1回足すと「42」になります。かける数が1つ増えると、答えはその段の数ぶん増える。この考え方は、忘れたときに自分で答えを出す手がかりになります。
「暗記が抜けたら終わり」ではなく、「前の答えからたどり着ける」と知っていることが、お子さんの安心材料になります。
間違えやすい式は前後3つをセットで唱える
「7×6=42」だけを繰り返すより、「7×5=35、7×6=42、7×7=49」と前後を含めた3つをセットで唱えるほうが、数の増える流れの中で確かめられます。
間違えた式が見つかったら、その式を責めるのではなく、「前後と一緒に3つ言ってみよう」と誘ってみてください。
音が似ている段は、はっきり大きな声で
「しち」「はち」など、聞き取りづらい音、言い間違えやすい音が含まれる段があります。小さな声で唱えると音がごちゃつきやすいので、一音ずつはっきり、少し大きな声で唱える練習が向いています。
お子さんが恥ずかしがる場合は、保護者の方も一緒に声に出すとやりやすくなります。
九九カード・ポスター・アプリ・プリントの使い分け
九九の道具は「どれがよいか」ではなく、「何のために使うか」で選ぶのがポイントです。代表的な4つの道具の役割を整理します。
算数セットの九九カードは「思い出す練習」の主役
ランダムに出して答える練習には、九九カードがいちばん向いています。学校の算数セットに含まれていることが多いので、まず手持ちを確認してみてください。
答えを見ずに思い出す練習になるため、ランダムで答える段階に進むときの中心になります。
ポスター・九九表は「答えを確認する道具」として使う
お風呂場や壁に貼る九九のポスター・九九表は、「見て確かめてよい」道具として位置づけるとよいでしょう。暗唱で詰まったとき、思い出せない式をすぐ確認できます。
「見たらカンニング」ではなく、「確かめ方を知っている」こと自体をほめてあげてください。
アプリ・ゲームは時間の約束を子どもと一緒に決める
クイズ形式のアプリやゲームは、ランダムに出題される反復練習に向いています。一方で、夢中になりすぎて時間が伸びやすい面もあります。
先に紹介した北海道教育委員会の資料でも、時間の目安や目標・優先順位を子どもと話し合うことが提案されています。
「1日10分まで」といった約束も、保護者の方が一方的に決めるのではなく、お子さんと相談して決めると守りやすくなります。
書いて確かめたいときのプリントの使いどき
声に出す練習だけでなく、書いて確かめたい場面にはプリントが向いています。間違えやすい段だけを書く、週末にまとめて確認する、といった使い方ができます。
練習プリントを探すときは、ナビクロのプリント一覧も参考になります。掲載内容や対象単元は変わる場合があるため、使う際にお子さんの学習状況に合うかどうかを確認してください。
続けるための声かけと、保護者の方自身の整え方
九九の練習は数日で終わるものではなく、学期をまたぐこともあります。続けるうえで大切なのは、お子さんへの声かけと、保護者の方自身の気持ちの整え方の両方です。
「前より1つ多く言えたね」と過程を具体的に伝える
「すごいね」「完璧だね」と結果だけをほめるより、過程や変化を具体的に伝えるほうが、次の練習への意欲につながりやすくなります。
- 「昨日は7の段で止まっていたのに、今日は前より1つ多く言えたね。」
- 「つまずいてもすぐ表で確かめられたね。それも大事な力だよ。」
- 「間違えたところ、前後と一緒に言い直せたね。」
反対に、「まだ覚えられないの?」「同じところで何度も間違えて」といった言葉は、練習そのものを嫌いになるきっかけになりやすいので、避けたいところです。
イライラしたときの立て直し方(時間を区切る・今日はここまで)
何度も促すうちに、お子さんが「めんどくさい」とやる気を失い、保護者の方もイライラする。そんな悪循環に入りかけたら、次の手順で立て直してみてください。
- 始める前に、時間か量の区切りを決めておく(前述の「時間か回数を先に決める」約束と同じ考え方です)
- 終わりが来たら、途中でも「今日はここまでにして、また明日やろう」と切り上げる
- うまくいかなかった日は、結果ではなく「今日どこまで言えたか」だけをメモして練習を閉じる
覚える速さには子どもによって差があり、早く覚える子もいれば、じっくり覚える子もいます。「今日覚えさせなければ」と気負うほど、保護者の方の焦りがお子さんに伝わります。練習はその場限りの勝負ではなく、繰り返しの一部と捉えて、肩の力を抜いてください。
観察メモの記入例(書くのは5点だけ)
練習の記録に立派なノートはいりません。カレンダーの隅や付箋に書くだけで十分です。
記入例:
「10月15日 夕食後10分。7の段のカード。順に唱えるのは全部言えた。ランダムは9枚中6枚答えられ、『7×6』『7×8』で止まった。前の答えに足すと自分で出せた。機嫌よく終われた。明日は7の段のカードから」
書くのは「日付・やったこと・できたこと・止まったところ・次やること」の5点です。うまくいかなかった日も「どこまで言えたか」が残れば、翌日の練習を始める目安になります。学校へ相談するときには、そのまま様子を伝える材料にもなります。
忘れて戻るのは自然。見守ってよい範囲
一度覚えた段を、数日後にすっかり忘れていることはよくあります。覚えては忘れ、また覚え直すという往復そのものが、定着の過程です。
先週できた段が今日は言えない、という程度であれば、責めずに声に出す練習へ戻れば十分です。「覚えたはずなのに」と問い詰める必要はありません。
九九の練習が止まったとき、場面別の次の一手
練習を続けていても、思うように進まない場面は出てきます。同じ「できない」に見えても、場面によって保護者の方の次の行動は変わります。4つの場面別に、最初の一手を整理します。
練習を始めないとき:開始手順を3つに絞り、選択肢を出す
声をかけても動かない原因は、大きく2つあります。何から始めればよいか分からない場合と、気持ちがのらない場合です。
始め方が分からない場合は、開始手順を3つに絞って決めておきます。たとえば「ノートで今日の段を確認する→教科書の式を1回音読する→カードを5枚だけ出す」。最初にやることを小さく決めておくと、促す言葉を減らせます。
気持ちがのらない場合は、「やる・やらない」ではなく「どちらの方法でやるか」を選んでもらいます。
保護者の方「そろそろ九九の時間にしようか」
お子さん(返事がない)
保護者の方「カードから始めるのと、教科書の音読から始めるのと、どっちがいい?」
お子さん「……カード」
保護者の方「じゃあ今日はカード5枚ね。終わったらメモしておしまいにしよう」
(翌日)保護者の方「昨日は『7×4』まで自分で言えたね。今日もカードからでいい?」
返事がないときに「聞いているの?」と畳みかけると、練習を始める前から気持ちが重くなりがちです。促しを繰り返すより、選択肢のある質問に切り替えます。翌日は、前の日にできたところを最初に伝えてから始めると、続きにつなげやすくなります。
始めるが続かないとき:練習より先にお子さんの状態を確認する
短い練習でも続かない日が重なるときは、練習方法を変える前に、お子さんの状態を確認してみてください。確認したいのは次の項目です。
- 夜の寝つきと朝の起き方(いつもより遅い、起きられない日が続いていないか)
- 学校から帰ったときの表情や、食事・おやつの量
- 習い事や外出が続く週ではないか
- 練習を始める時刻が、お子さんの疲れる時間帯と重なっていないか
疲れが見える日は、練習を1日休むか、音読1回だけにして早めに休むのも一つの方法です。休んだことを責める必要はありません。生活リズムの見直しは、進級のタイミングなどで家族で話し合う材料にもなります。
答えが出てこず止まるとき:「言える場所」まで戻る
カードや口頭での質問に答えられず止まってしまったときは、お子さんが「どこまで戻れば言えるか」を一緒に探します。手順は次の通りです。
- どの式で止まったかを一緒に特定する(例:7×6)
- その1つ前の式は言えるか確かめる(7×5は言える?)
- 言えたら「そこに7を1回足すといくつになる?」と尋ねてみます
- 1つ前も言えなければ、その段の順唱に戻る。順唱もあやしければ、教科書の例題で意味の確認まで戻る。
答えをすぐ教えたくなりますが、「前の答えに足す」考え方で自分の力でたどり着けたほうが、次に止まったときの手がかりになります。全部を言い直させる必要はなく、戻るのは1つ手前までで十分です。
時間の約束を守れないとき:罰ではなくルールを見直す
「アプリは1日10分」といった約束が守れなかったとき、取り上げたり翌日禁止にしたりする前に、ルールのどこが守りにくかったのかを一緒に確認してみます。
- 時間の長さ:10分では区切りをつけにくい内容だったか。15分なら納得して終えられるか
- 始める時刻:疲れている時間帯や、ほかにやりたいことがある時間帯と重なっていなかったか
- 終わりの合図:タイマーやアラームなど、終わりが分かる仕組みがあったか
- 決め方:保護者の方が一方的に決めた約束になっていなかったか
確認したら、新しい約束をお子さんと一緒に決め直します。「守れなかったから罰を与える」のではなく、「守れる形に直す」ことが目的です。時間の目安を子どもと話し合い、実態に応じて見直す考え方は、先に紹介した北海道教育委員会の資料でも提案されています。
学校に相談したほうがよいサインと伝え方
多くのつまずきは、段階に合った練習を続けることで乗り越えられます。一方で、ご家庭だけで抱え込まないほうがよい場合もあります。
相談を考える目安となる様子
次のような様子が続く場合は、担任の先生への相談を検討してみてください。
- 授業についていけない様子が続き、本人が「算数が分からない」と口にする
- 九九の話題そのものを強く嫌がり、練習の提案に拒否や強い抵抗が続く
- 段階に合わせた練習を続けても変化が見られず、ご家庭では次の手立てが見つからない
これらは「すぐ相談すべき」という一律の基準ではなく、あくまで判断するときの目安です。家庭学習の時間や目標についても、公的な資料では「各ご家庭や子どもの実態に応じて設定し、見直すもの」とされています。お子さんの様子を日ごろから見ている保護者の方が「いつもと違うな」と感じるかどうかも、一つの判断材料になります。
なお、発達や医学的なことは専門家が判断する内容であり、ここでは断定しません。気になることが続く場合は、まず学校に相談し、必要に応じて公的な相談窓口につないでもらいましょう。
先生への伝え方の例
相談の際は、次の4項目をメモしておくと、限られた時間でも要点を伝えやすくなります。
- いつ:いつ頃から、どのくらいの期間続いているか(例:10月に入ってから3週間ほど)
- 教科と単元:算数のかけ算、九九のどの段か(例:7の段)
- ご家庭で試したこと:内容と期間(例:夕食後の10分に教科書の音読と九九カード、1か月ほど)
- 学校で知りたいこと:授業中の様子、テストの結果、学校で行っている練習方法など
「様子」と「ご家庭で試したこと」を事実に沿って伝えると、先生も状況をつかみやすくなります。たとえば次のように伝えられます。
「7の段で止まっていて、1か月ほど、夕食後の10分に教科書の音読と九九カードを続けています。順に唱えることはできますが、ランダムで聞くと答えが出ないことが多いです。学校での様子はいかがでしょうか。」
「どうすればいいですか」と漠然と伝えるより、「ここまでできていて、ここが難しい」と具体的なほうが、学校とご家庭で練習をそろえやすくなります。
九九が「できた」と言える目安と、今日からの一歩
九九は「全部暗唱できたらゴール」と思われがちですが、目安は3つの観点で見ると分かりやすくなります。
- 順番に唱えられる(のぼり・くだりで言える)
- ランダムに聞かれて答えられる
- 場面を式にできる(文章題で「何のいくつ分か」を式に表せる)
3つ目の「場面を式にできる」は忘れられがちですが、学校の適用題(文章題)で問われる力です。唱えられるだけでなく、式にして使えるところまでが九九のゴールです。
今日からの一歩は、難しいことではありません。まず今夜、お子さんの教科書とノートを開いて「今どの段まで進んでいるか」を確かめるところから始めてみてください。今の段階が分かれば、明日の10分に何をするかも決めやすくなります。
参考情報
監修:新興出版社啓林館 坂本陽一