中学生が「学校に行きたくない」と言った朝の初動と声かけ・相談の目安

朝、中学生の子どもから「学校に行きたくない」と言われた場合、理由を問い詰めたり、急いで登校させようとしたりする前に、落ち着いて確認できることがあります。
保護者の方が今日のうちに決めるのは、3つだけでかまいません。安全に関わることがないかの確認、その日休むかどうか、学校への連絡の3点です。理由の特定や、転校・進路といった将来のことは、その朝に決める必要はありません。
まず大切なのは、命の安全と体調の確認です。いじめや暴力、自分や他人を傷つけることへの言及があった場合は、一人にせず、その日のうちに学校や相談窓口へつなぎます。安全に関わる訴えがない場合も、頭痛や腹痛、眠れていない様子など、その日の体調を見ることから始めます。
「行きたくない」は、言葉にできない何かを伝えようとするサインかもしれません。強制したり決めつけたりせず、まずは様子を見ながら必要なことを確認してください。
「学校に行きたくない」と言われたら、まず安全と体調の確認を
「行きたくない」の理由を聞く前に、確認したい順番があります。最初は安全、次にその日の体調です。病気の判断を保護者の方だけで行う必要はありません。気になる体調の変化は医療機関に相談してください。
安全に関わる訴えがあったら、一人にせずその日のうちに相談を
いじめや暴力を受けているという訴え、「死にたい」「消えたい」など自分を傷つけることへの言及、誰かを傷つけたいという言葉。これらがあった場合は、様子を見る段階ではありません。子どもを一人にせず、その日のうちに学校(担任・養護教諭など)や、24時間子供SOSダイヤル(0120-078310)などの相談窓口につなぎます。夜間や休日で学校と連絡が取れないときは、24時間子供SOSダイヤルのように夜間・休日も利用できる窓口があります。
このとき、本人から「誰にも言わないで」と言われることがあります。気持ちは尊重しつつも、安全に関わる場合は、保護者の方が対応することを優先してください。「黙っていてほしい気持ちは分かる。でも、あなたの安全がいちばんだから、学校に相談させてほしい。」と、相談する理由を言葉にして伝えます。何を誰に伝えたかは、後で本人にも共有します。
命に危険が迫っていると感じる場合は、一人にせず、110番・119番などの緊急支援を優先してください。
頭痛・腹痛・眠れていないなど、その朝の体調を見る
熱はあるか、頭痛や腹痛を訴えているか、朝ごはんが食べられたか、昨夜は眠れていたか。ご家庭で見られるのは、こうした当日の様子です。「学校のことを考えるとおなかが痛くなる」という訴えも、仮病と決めつけず、体の反応として受け止めます。
体調の訴えは、「いつから」「どこが」「どのくらい」と事実を聞く形で確認します。医学的な判断をご家庭だけで行う必要はありません。体調面の心配が続く場合は、医療機関への相談も選択肢です。
「今日休むか」と「これからどうするか」は分けて考える
「今日1日休むこと」と「今後ずっと休むこと」は、別の決定です。今日休ませたからといって、将来の方針が決まるわけではありません。まず今日の安全と休養を確保し、今後のことは落ち着いてから、子どもや学校と一緒に考えられます。
朝の初動。理由を問い詰めない声かけと、休ませる判断
朝の初動は、最初の一声と休むかどうかの判断、学校への連絡が主になります。支度が進まない場面ごとの動きや、休むと決めた日の過ごし方も、あわせて確認してください。声かけや手順はいずれも一例です。子どもの性格や、ご家庭の普段の言葉づかいに合わせて調整してください。
最初の一声は、受け止める言葉から(声かけ例)
最初の一声は、理由を聞く言葉ではなく、受け止める言葉から始めるのがおすすめです。
朝「行きたくない」と言われたとき(例):
「そうなんだ、話してくれてありがとう。」
「今日はつらそうだね。まず少し落ち着こうか。」
打ち明けてくれたとき(例):
「言ってくれてよかった。一人で抱えていたんだね。」
「責めているわけじゃないよ。一緒に考えたい。」
話せない、黙ってしまうとき(例):
「話せそうなときでいいよ。いつでも聞くからね。」
「今日は無理に聞かない。ごはん食べようか。」
声かけから翌日までの短い会話の流れ(例):
保護者の方「そうなんだ。今日はつらそうだね。」
本人「……。」(返事がない)
保護者の方「無理に話さなくていいよ。今日は休むか、少し遅れて行くか、どうしたい?」
本人「…わからない。」
保護者の方「じゃあ、今日は休んで様子を見ようか。学校には連絡しておくね。」
(翌日) 保護者の方「昨日は休んだね。今日はどんな調子?」
返事がないときは、畳みかけずに選択肢を出します。その場で結論が出なければ、その日の方針は保護者の方が決め、翌日の状態を見て見直します。一文を短く、間を置いて話すと、本人が受け取りやすい場合があります。
「うるさい」「ほっといて」と強く返されたときは、それ以上踏み込まず、いったん引きます。時間を置いてから、「休む」「遅れて行く」などの選択肢を出します。選択肢は2つ程度に絞るのが目安です。多すぎると、その場で決めにくくなるためです。
一方で、避けたい言葉もあります。
- 「みんな我慢している」など、他者と比較したり一般化したりする言葉
- 「どうせ〜が原因でしょ」など、理由を決めつける言葉
- 「さあ、支度して。行くよ」など、強制につながる言葉
- 「頑張って」という励まし
一方で、「頑張って」は励ましのつもりでも、頑張れないからこそ困っている本人にはプレッシャーになる場合があるため、伝えるタイミングや受け取られ方には注意が必要です。
支度を始めない・続かない・出られない・行けなかった。場面別の次の行動
支度を始めない、起きてこない:
何度も呼びに行くより先に、体調と安全の確認をします。引きずり起こしたり布団をはいだりする強制は避け、1回目の声かけの段階で「起きたくない」のか「起きられない」のかを責めずに聞きます。つらそうな場合は、休むかどうかを考えます。
支度は始めるが、途中で止まってしまう:
着替えや食事が進まない場合は、その場で登校を促し続けないようにします。「あと◯分」など時刻を告げ続ける声かけは口論になりやすいため、いったん止めます。「今日はどうしたい?」と本人の状態を聞き、「休む」「遅れて行く」などの選択肢を出します。
玄関や登校路で止まる、家を出られない:
無理に連れて行こうとせず、いったん帰宅して落ち着かせます。登校路でのやり取りは、本人にとって人目が気になる場面でもあるため、その場で長引かせないようにします。体調と安全を確認し、理由は問い詰めません。学校には保護者の方から連絡します。
「明日は行く」と言ったのに、行けなかった:
約束を破ったと責めるのではなく、「行こうとしたこと」を認め、翌日も同じように声をかけます。「行く」と言ったこと自体は、行こうとする気持ちの表れとして受け止めます。同じ状態が繰り返される場合は、様子見の段階から学校や相談窓口に相談します。
休ませるか迷ったときの判断の目安
体調・安全・本人の状態について、朝の短い時間で確認できる項目をチェック形式でまとめています。あくまで目安であり、最終的な判断は、ご家庭と学校の状況に合わせて行ってください。
- 熱・頭痛・腹痛・吐き気など、体調の訴えがある
- 昨夜眠れていない、寝不足が何日も続いている
- 朝ごはんが食べられない、ここ数日の食事量が減っている
- いじめや暴力など、安全に関わる訴えがある(この場合は休む判断とは別に、その日のうちに相談を)
- 表情がこわばる、涙もろいなど、普段と明らかに違う様子がある
- 「行きたくない」と言葉にできる、または言えないまま体調だけが悪化している
- 昨日の帰宅後から今朝までに、気になる出来事や変化があった
- 無理に行かせた場合、状態が悪化しそうに見える
項目の数で休むかどうかを決めるものではありません。安全に関わる訴えが1つでもあれば対応を優先し、体調や本人の様子を個別に確かめて学校と相談してください。「今日休むこと」と「今後の方針(転校や進路など)」は分けて決めてください。
休むと決めた日の過ごし方。朝から夜までの流れ(例)
休むと決めたあと、「1日中どう過ごさせればよいか」も気になるところです。次の流れは中学生の子どもを想定した例であり、一律の基準ではありません。時刻を決めることより、食事と睡眠の時間を軸に組み立てます。
休むと決めた日:
朝は、学校へ連絡したら予定を入れずに休みます。朝ごはんは食べられる範囲でかまいません。
昼食は普段の時間から大きくずらさないようにして、午後は横になったり、好きなことをしたりして過ごします。
夜は、夕食を一緒に食べ、翌日のことは「明日はどうしたい?」と一言だけ尋ねます。結論が出なくてもかまいません。
休みが続いている日:
朝は、起きる時間と朝食の時間を大きくずらさないようにします。
昼は、買い物や散歩など、本人が無理なく外に出られるなら、短い時間でも外に出ます。学校や窓口への連絡は、保護者の方が昼間のうちに済ませておきます。
夜は、就寝時間を意識します。
保護者の方が仕事などで日中不在になる場合は、連絡の取れる手段(電話・メッセージなど)と、体調が悪化したときの連絡先を決めておきます。本人が一人で過ごすことに強い不安を示す場合や、連絡が取れない時間が長くなる場合は、家族など頼れる大人に見守りを頼んだり、学校や相談窓口に相談したりしてください。生活リズムを「完璧に戻す」ことが目的ではありません。食事と睡眠の時間が大きく崩れないことを目安にします。
無理に登校させない。代わりに学校と相談できる選択肢
無理に登校させようとして、玄関や登校路でもめると、本人の負担が大きくなります。次に子どもが困ったときに、保護者の方へ相談しにくくなることがあります。強制は避けましょう。
「休むか、そのまま登校するか」の二択だけとは限りません。遅刻して行く、短時間だけ過ごす、保健室で過ごす、といった方法が可能かどうかは、学校への確認が必要です。担任や養護教諭に相談してみてください。
学校への欠席連絡と、伝える範囲の決め方
欠席連絡は保護者の方が行い、子どもが何度も理由を説明しなくてよい形にすると、本人の負担を減らせます。この節の文例と手順は、すべて編集部が作成した例です。連絡手段(電話・メール・学校指定のアプリなど)や欠席の扱いは学校ごとに異なるため、在籍校の運用に合わせてください。
原因を断定しない欠席連絡の文例
文例1(体調不良として連絡する場合):
「おはようございます。◯年◯組の◯◯の保護者です。本日、体調不良のため欠席させます。よろしくお願いいたします」
文例2(詳しい理由を伝えない場合):
「おはようございます。◯年◯組の◯◯の保護者です。本日、家庭の事情により欠席させます。本人の状態について、落ち着いてから改めてご相談させていただきます」
文例3(欠席が続く場合):
「おはようございます。◯年◯組の◯◯の保護者です。本日も引き続き欠席させます。本人の状態が落ち着きましたら、改めてご相談させていただきます」
原因を保護者の方が断定して伝える必要はありません。「いじめかもしれない」「友人関係のようだ」と推測で伝えると、学校側がその前提で動き、本人が望まない展開になることがあります。まだ理由がわからない段階では、「体調不良」「家庭の事情」という連絡で足ります。
また、連絡の時間帯や手段は、学校の指定に合わせます。欠席が続く場合に毎朝の連絡が必要かどうかも、学校の運用を確認してください。
本人への連絡は、保護者の方経由にできる
欠席中に、先生やクラスメートから本人へ直接、電話やメッセージが来る場合があります。本人が返信に追われて休めないときは、次のように依頼できます。
依頼文(例):
「休んでいる間、本人への連絡は保護者経由でお願いできますでしょうか。必要な連絡は、本人の様子を見ながらお伝えします」
すべての連絡を遮断するのではなく、本人の負担にならない連絡方法にするのが目的です。どこまで依頼するかは、本人の状態と学校との関係に合わせてください。
何を誰に伝えるか、本人と合意しておく
思春期の本人にとって、何を学校や友人に知られるかは敏感な問題です。保護者の方だけで判断して全部伝えると、信頼関係を損なうことがあります。次のように、本人と伝える範囲を確認しておくと安心です。
- 「学校にはここまで伝えるけれど、大丈夫?」と、伝える範囲を本人に確認する
- 担任に伝えたことは、養護教諭や学年の先生に共有される可能性があることを伝える
- クラスメートには何が伝わるのか(欠席の事実だけか、事情も伝わるのか)を確認する
- 伝えてほしくないことは、「本人が話すまで控えてほしい」と保護者の方から学校に伝える
安全に関わることが判明した場合は、この合意の例外です。本人が「誰にも言わないで」と望んでも、命や身体の安全を守るため、保護者の方が学校や相談窓口につなぐことを優先します。その際も、何を伝えたかを本人に共有しておくと、信頼を保ちやすくなります。
理由を決めつけず、ご家庭で見える状況から考える
「行きたくない」の背景を、医学的に断定することはできません。一方で、ご家庭で観察できる状況から、確認の順番と最初の対応を考えることはできます。次の表は、状況を6つに分け、「ご家庭で見えるサイン」「最初に確認すること」「最初の対応・相談の目安」の3点で比較したものです。状況の例はいずれも一例で、あくまで「〜かもしれない」という見方にとどめてください。決めつけると、本人が話しにくくなることがあります。
| 状況 | ご家庭で見えるサイン | 最初に確認すること | 最初の対応・相談の目安 |
|---|---|---|---|
| いじめ・暴力など、安全に関わる気配があるとき。 | 「死にたい」「消えたい」などの言葉、持ち物の破損・紛失、説明できないけが。 | 安全に関わることがないか。「学校で嫌なことはなかった?」と聞く。 | 様子見の段階にしない。一人にせず、その日のうちに学校や相談窓口へ。 |
| 友人関係やSNSでの出来事が気になるとき。 | 通知への緊張、特定の友人の話題を避ける、SNSのやり取りで嫌なことがあった気配。 | 「最近、 友達とどう?」程度の軽い聞き方から始める。 | 様子が続くなら担任に学校での様子を確認。いじめの心配がある場合は当日中に。 |
| 部活動・先生・クラスの雰囲気が気になるとき。 | 部活や特定の授業の前に体調不良、特定の話題で黙る、部活の道具に触れなくなる。 | 欠席や体調不良に曜日・教科の偏りがないか、メモしておく。 | パターンが見えたら担任へ。先生が関係していそうな場合は担任以外の教員や窓口へ。 |
| 授業・テスト・進路への不安が見えるとき。 | テスト前や成績返却時期の体調不良、「ついていけない」という言葉、課題に手がつかない。 | どの教科のどこで止まっているかを、本人が話せる範囲で聞く。 | まず休養を優先。落ち着いてから担任に学習状況を相談。 |
| 朝の体調や生活リズムの乱れが続くとき。 | 朝の頭痛・腹痛・吐き気、午後や休日は比較的元気、睡眠や食欲の乱れ。 | 体調の訴えと曜日・時間帯の関係、睡眠と食事の時間を控えておく。 | 続く場合は医療機関への相談も選択肢。ご家庭で断定しない。 |
| 本人にも理由がわからないとき。 | 「自分でもわからない」と説明できない、きっかけが見当たらないのに登校しぶりが続く。 | 観察できる範囲(体調・睡眠・食事・人とのつながり)を見続ける。 | 理由がわからないままでも、状態が続けば学校や相談窓口へ。 |
友人関係やSNSでの出来事が気になるとき
まずは、聞く場面と聞き方を選びます。食事中や車での移動中など、さりげなく話せる場面で「最近、友達とうまくいってる?」と聞くところから始めます。話さない場合は「いつでも聞くよ」と伝えるにとどめ、連日の聞き直しは避けます。
スマートフォンの中身を本人に無断で確認するのは、本人が話してくれなくなることがあるため避けます。いじめの心配がある場合は、中身の確認より先に、学校や相談窓口への相談を優先してください。学校に聞くときは「ご家庭ではこう見えるのですが、学校ではどんな様子ですか」と、評価するのではなく、学校での様子を尋ねると話を進めやすくなります。
部活動・先生・クラスの雰囲気が気になるとき
まずは、気になるパターンをメモしておきます。記録は、日付と曜日、体調の訴え、前日の出来事、食事と睡眠の様子の4点程度で足ります。責めるためではなく、学校と共有するための記録として残しておきます。
観察メモの記入例:
◯月◯日(月) 朝に腹痛を訴えて欠席。前日は部活の試合。夕食はいつも通り食べた。月曜の欠席は◯週連続。午後は家で元気に過ごしていた。
曜日や部活の予定と体調の組み合わせが見えてきたら、担任への相談材料になります。その先生が関係していそうな場合は、担任以外の教員(養護教諭や学年主任など)や、公的な相談窓口に連絡する選択肢もあります。
授業・テスト・進路への不安が見えるとき
最初の一手は、聞く時期と聞き方を選ぶことです。テスト直後など本人が敏感になっている時期は避け、本人が話せる範囲にとどめます。「数学の1学期の途中あたりから分からない」のように、どこから分からなくなったのかが具体的になるほど、後で戻る場所を決めやすくなります。答案やノートを一緒に見る場合は、見せてよいか本人に確認してからにします。
話せない、答えたがらない場合は、提出物の状況をさりげなく見るにとどめ、「勉強のせいでしょ」と決めつける聞き方は避けます。学習面の不安が背景にありそうな場合も、まず休養を優先します。学習の再開は、本人が望み体調に無理のないときでかまいません。進路の不安はもっともですが、その日の朝に結論を出す必要はありません。
朝の体調や生活リズムの乱れが続くとき
「いつ(曜日・時間帯)」「どこが」「どのくらい」に、食事と睡眠の様子を添えるメモをとりましょう。受診するときや学校に伝えるときに、そのまま使えます。
体調面の心配が続く場合は、かかりつけ医など医療機関への相談も選択肢です。ご家庭で疾患名などを断定する必要はありません。
本人にも理由がわからないとき
理由を言葉にできるとは限りません。「本当は理由があるんでしょ」と迫ったり、無理に理由を作らせたりしないでください。
また、「理由ははっきりしないのですが、登校しぶりが続いています」と伝えるだけでも、学校や相談窓口に相談できます。
放っておいてよい範囲と、見守りの線引き
話さないことも、本人の選択として尊重する
思春期の本人にとって、保護者の方に話すことには、恥ずかしさや「心配をかけたくない」という気持ちが伴うことがあります。話さないこと自体を責めたり、詰問したりしないようにしましょう。
「話せそうなときに話してね。話さなくても、味方でいるよ」と伝えるだけでも、本人にとっては支えになります。
実際に話してくれたときは、途中で意見や評価を挟まず、最後まで聞くことに集中します。「それは違うんじゃない?」と遮ると、次に話してくれなくなる場合があるので、全部聞いたあとで、「話してくれてありがとう」と受け止めます。
見守りと放置は違う。さりげなく様子を見るポイント
「話せるまで待つこと」と「放置」は違います。見守りとは、距離を保ちながらも、変化に気づける状態を作っておくことです。さりげなく見るポイントの例を挙げます。
- 食事は一緒に食べられているか、量に変化がないか
- 睡眠時間や起きている時間帯に、大きな乱れがないか
- 短くても日常の会話のやり取りがあるか
- 部屋から出てくるか、好きなことに手がついているか
- 極端に沈んでいる、涙もろいなど、表情の変化がないか
観察が「監視」にならないよう、注意してください。部屋の様子を四六時中確認する、スマートフォンの中身を勝手に見る、といった行き過ぎは、信頼を損ねることがあります。
保護者の方のイライラや焦りとの付き合い方
毎朝のやり取りが続くと、保護者の方にも「なぜ行けないの」というイライラや焦りが出て当然です。ご自身を責める必要はありません。強く言いそうになったと感じたら、その場で結論を出そうとせず、いったん席を外して間を置くのも方法の一つです。朝の限られた時間にすべてを解決しようとしないだけで、落ち着いて声をかけやすくなります。
強く言ってしまった日は、言い直すことができます。
言い直しの例:
「今朝は強く言いすぎたね。ごめん。無理にとは言わないから、少しずつ一緒に考えよう。」
保護者の方だけでも、学校や、文部科学省の地元の相談窓口一覧・24時間子供SOSダイヤル(0120-078310)といった公的な窓口に相談できます。保護者の方自身が休むこと、気持ちを外に出すこと(信頼できる人に話す、メモに書き出すなど)も大切です。
ゲーム・スマートフォンは取り上げず、ルールは本人と決める
罰や交換条件にしないほうがよい理由
休んでいる間、ゲームやスマートフォン(スマホ)に没頭している姿を見ると、取り上げたくなるかもしれません。しかし本人にとって、それが気分転換や、友人とつながる手段になっている場合があります。
「登校したら返す」という交換条件にする前に、どのような使い方をしているか本人に聞いてみましょう。睡眠や食事への影響、誰との連絡に使っているかを確認し、安全に使うための約束を相談する方法があります。脅迫や有害な接触など安全の心配がある場合は、利用の制限も含めて学校や公的相談窓口に相談してください。
確認したいのは、睡眠・食事・人とのつながりへの影響
利用そのものではなく、生活への影響を見ます。夜遅くまでの利用で睡眠が崩れていないか、食事は取れているか、利用時間はどのくらいか。オンラインであれ、人とつながっているかどうかも見ておきたい点です。影響が気になる場合は、責めるのではなく、本人と話し合う材料にします。
確認は「何時ごろまで使っていたの?」「朝起きられないのは、夜遅くまで使っているからかな」と、事実を聞く形で行います。利用時間をご家庭で把握しようとして、本人の端末を無断で確認することは避けてください。
ルールは本人と相談して決める(例)
保護者の方が一方的に決めるのではなく、本人と相談して決めると、本人も守りやすくなる場合があります。以下は例示です。時間帯や内容は、ご家庭の状況に合わせて調整してください。
- 「夜◯時以降は充電して使わない」など、時間帯の区切りを一緒に決める
- 食事の時間は一緒に食べる約束にする
- 決めたルールは、状態に合わせて見直してよいことにする
決めたルールが守れなかったときも、罰として取り上げるのではなく、下記の例のようにルールのどこを見直すかを本人と確認します。
- 時間帯が実態に合っていない→部活や友人との連絡の時間を聞き、区切りの時刻をずらす
- 使わない時間の置き場所が決まっていない→充電場所を1か所に決める
- 約束の内容があいまい→「何時に・どこで・何をするか」を1文で言える形にする
一度に全部変えず、まずは1か所だけ見直して様子を見る方法もあります。守れなかったことを責めるより、守れる形に近づけることを目的にします。
休みが続いたら。相談の目安と公的な窓口
命に危険が迫る場合は、一人にせず緊急支援を優先してください。それ以外の場面でも、相談に「早すぎる」はありません。
安全の心配があるときは、当日中に
いじめや暴力、自分や他人を傷つけることへの言及があった場合は、その日のうちに学校や相談窓口につなぎます。
様子を見る段階から、早めに相談していい
「何日たったら相談」という日数の目安を待つ必要はありません。休みが続く、理由がわからない、保護者の方だけでは対応が難しいと感じる場合は、様子見の段階から早めに相談できます。
相談は、保護者の方だけでもできます。本人の同席が難しい段階でも、状況を整理して伝えるだけで、次の対応の助けになります。相談することを本人に伝えるかどうかも考えましょう。原則として「学校や相談窓口に相談するよ」と伝えておくと、後から知ったときに本人が不信感を抱くのを防ぎやすくなります。ただし安全に関わる場合は例外で、本人の同意を待たずにその日のうちに動きます。
さらに、相談の前に次の項目をメモしておくと、学校や窓口とのやり取りが進めやすくなります。
- いつから登校しぶりや欠席が始まったか
- どの曜日・時間帯に多いか。特定の教科・部活・行事との関連が見えるか
- 体調・食事・睡眠の変化
- ご家庭で試したこと(声かけ、欠席連絡の方法、本人と合意した伝える範囲など)
- 学校で知りたいこと(授業中や休み時間の様子、友人関係、欠席の扱いなど)
お住まいの地域の相談窓口(文部科学省の一覧)
文部科学省は、都道府県ごとの不登校に関する相談支援機関を一覧で公開しています。保護者の方や支援者が、お住まいの地域の相談窓口を探すことができます。窓口の運用は地域によって異なるため、設置や利用方法は学校や教育委員会に確認してください。
24時間子供SOSダイヤル(0120-078310)
文部科学省の「24時間子供SOSダイヤル」(0120-078310)は、夜間・休日を含め24時間、子どもや保護者等が相談できる電話窓口です。原則として、発信した所在地の教育委員会の相談機関につながります。登校や友人関係の不安を含むSOS全般が対象で、子ども自身も利用できます。
この番号は緊急出動の番号ではありません。命の危険が迫る場合は、一人にせず緊急支援を優先してください。
校内教育支援センター・教育支援センターという場所
文部科学省のCOCOLOプランは、「学びたいときに学べる環境」や多様な学びの場の整備を掲げています。その一環として、学校内に設置される校内教育支援センター、学校外に設置される教育支援センターがあります。スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等による、保護者の方向けの支援も掲げられています。
実際に設置されているか、利用できるかは、在籍校やお住まいの地域の教育委員会への確認が必要です。また、こうした場での学びが出席扱いになるか、成績にどう反映されるかは、一律には保証されていません。
まずこれらの公的な窓口で、利用できる支援を確認してみてください。
勉強の遅れが心配なとき。休養を優先する考え方
休養が先。「休むなら勉強」を条件にしない
「休むなら勉強しなさい」という条件づけは、休養を罪悪感に変えてしまうことがありますが、休養が先です。
学習のことより先に確認するのは3点です。眠れているか・起きられているか(睡眠)、食べられているか(食事)、頭痛や腹痛などの訴えがないか(体調)です。これらが整っていない日に学習を勧めると、本人の負担が増える場合があります。学習の遅れについては、状態が落ち着いてから、どう取り戻すかを考えます。
本人が望むときの見直し方。教科書・ノート・例題を習った順に
本人が「少しやってみたい」と望み、体調に無理がないときに限ります。学校で習った順序に沿って、短い時間から見直す手順の一例です。
- 教科書の目次で、休んだ期間に習った単元の位置を確認する
- 授業で使ったノートを開き、板書や例題を見返す(ノートが取れていない場合は、復帰後に先生へ確認する)
- 教科書やワークの例題を、1問から解き直す
- 例題が解けたら練習問題へ進む。解けなければ教科書の説明に戻る
どこから分からなくなったか分からない場合は、教科書の目次を前の単元へさかのぼりながら見て、「これならできそう」と思える単元まで戻ります。
どこで止まったかが分かれば、そこが戻る地点です。1回10〜15分など短い時間から始め、つらくなったら止めます。「追いつくこと」ではなく、「今どこにいるかを確かめること」を目標にしてください。休んだ期間の課題やプリントの有無は、復帰後に本人から、または保護者の方から学校へ確認しましょう。
必要な練習がある場合
教科書の該当単元に合わせて練習が必要な場合は、ナビクロのプリント一覧から単元を探すことができます。
また、教材の内容をAIツールに取り込んで解かせることは、著作権や学びの質の観点から勧められません。
よくある質問
1日だけ休ませてもよいですか
「今日1日休むこと」と「今後の方針」は、別の決定です。安全と体調を確認したうえで休ませる判断は、ご家庭でできます。欠席連絡の方法や欠席の扱いは、在籍校の運用に従ってください。
休むと元気になるのは仮病ですか
仮病と決めつける必要はありません。休んで元気になるのは、負担から離れたことで体と心が回復に向かっている、と考えることもできます。また、学校のことを考えると頭痛や腹痛が出る、という体の反応もあり得ます。どの場合でもご家庭で断定せず、観察を続けてください。
何日休んだら学校や窓口に相談すべきですか
欠席日数だけで相談の必要性を決めず、本人の状態や困りごとを伝えて相談してください。安全の心配がある場合は当日中に、それ以外でも、休みが続く・理由がわからない・保護者の方だけでは難しいと感じたら、早めに相談できます。保護者の方だけでの相談も可能です。
理由を話してくれません。どうすればよいですか
話さないことも本人の選択として尊重しつつ、「いつでも聞くよ」と伝えて待ちます。話せるまで待つことと、放置は違います。食事・睡眠・会話などをさりげなく見ながら、状態が続く場合は、理由がわからないままでも学校や相談窓口に相談できます。
卒業や進学への影響が心配です
欠席の扱い、出席扱いの条件、成績への反映は、学校や地域の制度によって異なりますので、在籍校やお住まいの地域の教育委員会に確認してください。進路への不安はもっともですが、その朝に転校や進路を決める必要はありません。落ち着いて情報を集めてから考えられます。
まとめ
当日に決めるのは、安全と休むかどうかと学校への連絡
安全に関わることがないかの確認、その日休むかどうか、学校への連絡。この3点ができれば十分です。
将来のことは、落ち着いてから一緒に考えられる
転校や進路といった将来のことは、子どもの状態が落ち着き、学校や公的な窓口から情報を集めてから、一緒に考えられます。
保護者の方だけで抱え込まず、文部科学省の相談窓口一覧や24時間子供SOSダイヤルなど、公的な相談先を使ってください。責めない姿勢で、観察と確認を続けていきましょう。
参考情報
- 文部科学省「不登校に関する地元の相談窓口」
- 文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」
- 文部科学省「COCOLOプラン」
- ナビクロ「プリント一覧」
監修:新興出版社啓林館 坂本陽一